お客様から聞いたお話し。
毎年、飛騨の方面の川まで鮎釣りにお出掛けになります。
里山に囲まれた清らかな渓流。
ちょうど、昨日が解禁日でした。
水温が低いために、稚魚の放流の時期が後ろにずれて、
それで毎年他所より遅くなるんです。
年々、里山の光景は変化しているのですって。
川にはカワウが増えて、上流までやってきて、
せっかく育った鮎を捕らえて喰う。
畑や田は電気柵で囲まれるようになった。
電気柵というのは、触れると微弱な電気が流れる柵で、
野生動物の食害から作物を守るために設けられたものです。
ここでの害獣は、イノシシ、シカ、サル、クマ!
今では、川に入るのにこの電気柵をいくつも跨いでいかねばならなくなってしまったそうです。
サルを見かける事なんて滅多になかったのが、今ではそこいらを平気で闊歩している。
こうした変化が起きたのもここ4〜5年の事だといいます。
こんな電気柵なんて、いかにも飛騨の里山らしいお話しだなんて思ったら、とんでもない。
この近くでは、津久井方面でも同様の対策を講じないと、作物なんて収穫できないらしいです。
お山の生産能力が落ちて、もうすでに野生動物を養えなくなっている、どうやらそういうことらしいのです。
人間と野生動物の生活圏は重なりつつあるのですね。
川の話しに戻ります。
清流で苔だけ食べて成長した本物の川魚のうまさは、今ではなかなか味わえないものとなっているそうで、この川で釣った鮎のうまさといったら、格別なものなんだそうです。
みなさん、「あじめ」ってご存知ですか?
私は初めて聞いたのですけれども、これ、渓流に棲むドジョウなんですって。
苔しか喰ってない、清らかなドジョウ。
伏流水に入り込んで産卵する性質を利用した仕掛けで捕らえるそうです。
今では大変な高級魚(キロあたり3万円くらいの値段になることもある)だそうで、2〜3年に1度しか漁も解禁されない。
しかも、その年に漁業権が与えられるのは集落の中でもほんの2〜3件。
食べ方は、なべに水を張って、みりん、しょうゆを入れる。
火にかけて、ぐつぐついわせたところで、あじめを生きたまま放り込んでフタをする。
というのが一般的だそうです。
昭和天皇がたいそう気に入っておられて「もう一度食べたい」と仰せになったという逸話も残っているそうです。
お話しして下さったこのお客様が毎年逗留される宿で「これが本物のあじめの味ですよ」といって出てきたそうですが、この魚の本当の旨さは、川魚の味に慣れ親しんだ者にしか分からないかも知れないとおっしゃっていました。
その季節、その場所でしか食べられない、そして分かる人にしか分からない本当の本物の味がある…。
先ほどお話ししたように、自然界のバランスが崩れてきているのも事実ですが、
こういったものを出してくれる宿があって、
都会でふつうに贅沢している人だって知らない、味わえないようなものが
ひっそりとした山里に存在すると知るとなぜだか、まだまだ日本も大丈夫なのかな?という気持ちになります。
あと、この川で穫れるウナギがすごいんです。
胴回りが6〜7センチくらいある。
特別の仕掛けが必要らしいです。
ここのウナギはいいもんしか喰ってない。
サワガニ、ゴリ、鮎など…。だから大きく育ち、味もばつぐん。
このウナギ穫りの名人は大阪にお住まいの方で、シーズンになると休みを利用してこの川にやって来る。この川に集まるみんなとは、もちろん顔見知り。
捕らえたらその場で、素人捌きで開いて蒲焼きにしてみんなで食べる。
ものすごい油なんだけど、もたれず、さっぱりしていて、とてもうまいって。
そりゃぁ、そうでしょうね。
この川、そんなに有名ではないみたいです。
毎年、全国から川を愛する釣り人が集まって一年ぶりに顔を合わせる。
シーズンが終われば、また自分の仕事のある場所に戻って…。
こんな場所と時間、そして仲間を持てるなんて、本当にすばらしい!!
人生の宝を持っているオジサン達です。
川の名前は明かしたくないです。
この人たちだけの宝であって欲しいと私は願うからです。
「川はみんなのものだろ!?」なんて言う人もいらっしゃるでしょうね。
もちろん、そうなんですけれども、
誰も彼もが、こうした川の愉しみ方まで寄ってたかって共有することはないでしょう?
それ以上のこと、知らなくていい人は知らなくていいと思うのです。
そういう人までが手を出してはいけない事ってあるのです。
川に入っていい者といけない者の区別はきっとあるはずです。
そういえば、私にはあるかな?
こんな場所と時間。
みなさんはいかがですか?
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