きのうの「”ノート”の裏書き」でも、紹介しましたけれども、私は代官山の「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」というお菓子屋さんで一年間、フランス菓子作りの稽古をしました。
このお店の名前、たしか、「セーヌ川のほとりに降る雨」とか、そんな意味だったと思います。
自由が丘の店を早番で上がって、代官山へと通っていました。
生徒さんは、仕事帰りの若い女性ばっかりで、男性はわたくしひとりだけ…。
教室に入ると、すでにスタッフのみなさんが準備を始めてくださっています。
上等のバターやら、何やらのいい匂いと、生徒のみなさんの付けてる香水?とかの甘い香りが渾然となり、いつもうっとりしていました。
ただ、教室の方は1度に2種類のお菓子をそれぞれ1台ずつ作りますので本当にハードです。うっとりしたままではいられません。
いろんな道具を使いますし、ついて行くのがやっと。必死です。
料理もそうだと思いますが、おいしいお菓子を作るのって、手際の良さが肝心なんですね。結局は頭の良さ、という事になるのだろうと思いますが。
落ちこぼれそうになるのを、必死で作ってました。周りのみなさんも、自分の事で精一杯という感じでした。お稽古といっても、本当にみんな大まじめだったんです。
仕事のきれいな人とそうでない人の差は歴然としてました。「もう少し、時間があれば」なんて言い訳は通用しないようです。出来る人は出来るし、出来ない人はいつまでいじっていてもだめなんです。(私は後者)それに、グズグズやってたらおいしくなくなりますもん。
まぁ、ぐずぐずのケーキしか作れなくっても、責任とって食べるのは自分なんだからいいんですけどね。
実習が終わると、スタッフのみなさんが作ってくださったお菓子や、時には、トゥレトゥール(お総菜)を囲んで、上等のリキュールなんかを飲みながらおしゃべりします。
教室を出る頃には、へとへとで、自宅に着くのが12時過ぎるようなことさえありました。
この「イル・プル」を主宰していらっしゃるのが、弓田亨さんという方で、日本における本格的なフランス菓子の第一人者。
本物を食べるということ、そのことに人生のすべてをかけてこられたような人です。
最近の日本人が好む「ふわふわ」「しっとり」「まろやか」など、実体のないお菓子作りを否定するかのような存在感あるお菓子を作っていらっしゃいます。
私はこの「イル・プル」のお菓子を「噛みしめながら味わう、幸福感を与えてくれるお菓子」と表現させてもらいたいです。
人を幸せにするお菓子作りについて、フランスでの修業時代、小さな女の子やおばあさんが手に持ったお菓子を大切そうに噛みしめながら食べているのを見て、本物を食べることの幸せ、本物を作ることの大切さを実感された、とご自身が何かに書いていらっしゃいました。
その信念や考え方をお菓子作りはもとより、文章でもしっかりと伝えることのできる人で、すごいな、見習いたいな、と思います。
まだまだ、到達できそうにはないですが…。
私も、幸福感を与えられるような、コーヒー作りができたらいいです。
余談ですが、コーヒーノートのお客様で、「イル・プル」の卒業生の方がいらっしゃいます。
私より、高学歴(選択したコースが違う。そのお客様のコースはプロとしても通用するほどの技術の習得を目的としています)
「座間にイル・プルの卒業生がいるなんてねぇ!」と、驚きました。
写真は、以前コーヒーノートで私が作って販売していた「フィナンスェ」です。
もちろん、「イル・プル」で勉強した通りのものを作って出していました。
当時、私が作っていたお菓子には「心を満たす小さなお菓子」という名まえを付けていました。

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