私の自由が丘での修業時代について、お話したいと思います。
コーヒー屋になろうと考えた私は、修業を始めました。じっさいにコーヒー屋を始めるとき、そんな辛気臭い修業が必要か?というと「別に必要なんてないよ」と言うこともできます。
ただ、私の場合、人様が口に入れるものを扱う仕事に就くからには、絶対に修業は必要と考えました。いろんないきさつの末、最初に修業させていただいたのが自由が丘にある「十一房珈琲店」という名前の自家焙煎店です。
それなりに歴史あるお店でした。土地柄、客層は華やかで芸能人も常連でたくさんいらっしゃいました。私の好きな作家、姫野カオルコさん、よしもとばななさん、もよくおいでくださいました。
今をときめくフランス菓子屋さん「モンサンクレール」を開業したばかりの辻口さんもよくいらっしゃってました。
このお店は、ネルドリップでコーヒーを淹れてました。経験のある方もいらっしゃると思いますが、ネルドリップの一杯どりのお店って注文してからすごく待たされるでしょう?
コーヒーを淹れる人は一人。一杯ずつしか淹れられないため、お客様をずいぶんとお待たせてしまうんです。24席くらいのお店でしたが、一度に満席になることもありました。
これだけのお客様を、ホール1名、コーヒー抽出1名で回してゆくのです。オーダーをざぁ〜っと見渡して、コーヒーを淹れる順番をまとめます。コロンビアならコロンビアのオーダーをまとめて一度に淹れてしまいます。
ですから、ネルドリップのお店では、注文の順序通りにコーヒーが提供されず、後に注文した人の方から先にコーヒーが出てくることもしばしばです。
お終いの方のお客様は、ひどいときには20〜30分お待ちいただくことさえあります。カウンターでイライラしながらコーヒーを待っていただいているお客様を目の前に、その殺気を感じつつ、何でもないふうを装いながら淡々とコーヒーを淹れられるようになるには経験と強い心臓が必要です。
初めのうちは申し訳ないのと、情けないのとで半ベソかきもってコーヒー淹れてました。そのうち慣れてくると”待たせて当たり前”と高を括るほどになりました。今思えば傲慢な感じもしますが、店の人間がオロオロしていては、お客様だって不安になってしまって、コーヒーを味わうどころではなくなってしまうんです。
このお店で3年間修業して「どんな状況に陥っても、大丈夫」そんな自信を持つほどになった私でしたが「まだまだ甘いっ!」と思い知らされました。それが、2番目に修業をさせていただいたお店「珈琲工房ホリグチ」でした。無茶苦茶に忙しいお店でした。「店の側の都合をお客様に押しつけるな!要領の悪い仕事すんな!背中にも目を持て!」怒鳴られっぱなしでした。
一番印象に残っている言葉は何と言っても「早くしろ!!」でした。オーナーの堀口俊英さん自身、非常にスマートに仕事をこなせる人でした。周りの先輩スタッフのみなさんも優秀な方ばかりでした。
現在の私があるのは、このお店での経験のおかげ、と言っても過言ではありません。
このお店でも3年間修業しましたが、他所では決して学ぶことの出来ない勉強をさせていただきました。
真実を言い当てる、歯に衣着せぬ発言から部外者には、クールでドライな印象を与える堀口さんですが、じっさいには本当に優しくて、愛のある人です。私は在職中からそれに応えることができず、未だに不義理ばっかりしてますが、そんな私を今でも優しく見守って下さっています。本当に感謝しています。
いつか、私から見た堀口さんのことをこの場で書かせていただけたらなぁ、と思っています。
昔を思い出しました
Posted in 修業時代.
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